科研費採択のための協働~小さなプライドを捨てて

現任校(新潟医療福祉大学)は、文系教員にとっては馴染みはありませんが、開学20年にして、リハビリテーション科学・スポーツ科学分野における全国有数の研究機関へと成長しています。

たとえば、科研費の採択実績をみてみると、「スポーツ科学、体育、健康科学、およびその関連分野(リハビリテーション科学を含む)」における採択件数(過去4年間の新規採択の累計数)が全国第4位を占めています(私立大学では第2位)。学科によっては、ほぼ全教員が科研費を持っている状況です。

私立大学の宿命のなかで

とはいえ、地方の私立大学の宿命上、研究を日々の活動のメインに据えることはできません。私の場合は、通常の授業やゼミに加えて、合格率100%を目指す資格対策、留年者・退学者を出さない学生指導(たとえば、必修科目の定期試験が不可の学生に対して8時間の補講をして再試験など)、そして、オープンキャンパスやさまざまな広報媒体の記事・動画作成はもちろん、学科ブログインスタグラムなどのSNSの日常的な更新を行う広報活動、さらには、海外大学も参加する学部・学科の垣根を越えた連携教育、大学院、自主ゼミなど、これらに全力で取り組んでいると、それだけで平日の日中(場合によっては土日も含めて)が終わってしまいます(ただし、私の場合は、所属学科長のご高配のおかげで相応の研究時間を確保でき、業務上のストレスはありません)。

そうしたなかで、いかに科研費に採択されるような研究活動を行っていくのか。限られた時間を効率的に活用する必要があります。私は、昨年度、「科研費対策委員」に任命され、この課題を踏まえた所属学科内の科研費対策に取り組むことになりました。

学科の垣根を超えたサポートを学科内で共有する

そこで大きな力となったのが、現任校で昨年度から実施されることになった「科研費サポートデスク」でした。このサポートデスクに申請すると、科研費採択の実績が豊富にある学内の教員から、学部の垣根を越えた個別サポートが受けられるというものです。「連携教育」を掲げ教員同士も大学全体で連携し合う現任校のよい面が表れた取り組みです。

このサポートで得られる情報は本当に貴重なものでした。そこで、各サポート教員の了解を得た上で、それらの情報を学科内で共有する場を作ろうと考え、Microsoft Teams上に専用チャネルを立ち上げました。そのチャネル内に、学科内の申請者が自身の申請書をスレッド形式にしてアップし、さらには、サポート教員からのアドバイスも併記し、さらに、スレッドにコメントをつけていくことで、お互いの申請書の最後のブラッシュアップを行う場としました。

繰り返しになりますが、サポートデスクからの個別アドバイスは本当に貴重で、大学の貴重な資源であるため、ここでは具体的な内容を記せません。しかし、懸命に研究を続けているならば、多くの場合は、申請書の研究内容・研究計画に問題はなく、「書き方」の問題であることを実感させられました。これは一人で申請書を書いていては決して得られない気づきでした。

私自身も採択!

その結果、私自身も次年度(今回)の科研費申請でサポートデスクを利用させていただき、基盤(C)ではありますが、地域社会学×アクターネットワーク理論で無事採択されました。

私が一番膝を打ったアドバイスは、研究計画を記すスペースが限られているなかで、「応募者の研究遂行能力」の欄を、研究計画を実行可能性を「具体的に」示す根拠にすることでした。

たとえば、「本研究の方法②で求められる、××に焦点を当てた記述を行ってきた。したがって、××を用いた本研究に着手する理論的・経験的準備はともに整っている」や、「この知見は本研究の方法②で××に調査する際の土台をなすものである」といった「書き方」に改めていきました。

考えてみれば当たり前のことですが、私の初版では、これまでの研究業績を並べ立てて研究の継続性を示すだけで満足してしまっていました。

このように、自分自身の「小さなプライド」を捨て去り、他の教員からの指摘に真摯に耳を傾けることで、自分にしか自明でなかったことを明るみに出し、それを申請書に丁寧に書き起こす。科研費申請は少し面倒な書類仕事ではありますが、私のような者にとっては、他の教員とつながり、自分の卑小さと強さを知る機会になりました。

この記事のタグ