在宅医療の推進がある種の「国策」として掲げられるなか、平成24年度の診療報酬改定においても、在宅医療の充実が重点課題として挙げられました。
今後増大する医療ニーズを見据えながら、医療と介護の役割分担の明確化と連携を通じて、効率的で質の高い医療を提供するとともに、地域で安心して暮らせるための医療の充実を図る必要がある。
(「平成24年度診療報酬改定の基本方針」より)
この背景には、理念的には「脱施設化」(がん患者の方の在宅ホスピスなど)の流れがある一方で、現実的に「医療施設を死に場所とすることの限界」があります。
上図は、診療報酬を審議する中医協で、私たちも作成に協力して二号委員(診療側委員)が提出した「わが国の医療についての基本資料」(2011年5月18日)にあるものですが、病院・有床診療所のベッド数は限られていることから、医療施設での死亡数が一定であると仮定すると、2040年には約49万人の死に場所がなくなるというデータです。
かくして、在宅医療の充実が必須の課題として認識され、少なくとも東京では大きな異論は聞かれませんが、超高齢社会の先頭を走る山形の現場では、「いまさら、在宅での看取りと言われても」という声ばかりが聞かれます。
というわけで、実際に統計データを調べてみたところ、東京と山形での在宅医療に対する感覚の違いを裏付ける結果が得られました。ここでは、その一部をご紹介します。
まずは、自宅死亡率の推移をみます(ちなみに、厚労省の統計で「在宅等死亡率」の語が用いられる場合は、老人ホーム・介護老人保健施設での死亡が含まれます)。
このように、山形県の自宅死亡率は、近年、急速に減少し、直近では全国平均を下回っている一方で、東京都では、自宅での死亡率が増加していることがわかります。
絶対数で見ても同様です。
全国の死亡率のデータは、近年、平行線をたどっていますが、地域による差がかなりあることをうかがわせます。実際に、都道府県ごとの自宅死亡率を見たのが次の図です。
このように、都道府県別にみると、自宅死亡率は、南関東、近畿で高く、九州、中国で低いことがわかります。
そして、同一県内で見ても地域によって自宅死亡率は大きく異なります。以下は、山形県の場合です。
こうした地域差は、実際には、文化的要因、経済的要因、社会制度的要因(社会インフラ含む)が複合的に絡み合って生まれていると考えられます。そのなかで、国が制度的要因に目を向け、対応するという姿勢は、国の役割を考えれば間違いはありません。
しかし、こうした地域差に対応していくためには、各地域(都道府県)が、独自性と自律性を発揮する必要があります。山形であれば、急速に自宅死亡率が下がっているのはなぜか? 自宅で亡くっている方は、実際のところ、どの程度、幸せな死を迎えているのか? など、わたしたちは、今後、調査研究を積み重ね、そうしたリアリティを言語化していきます。