ローカル・ガバナンスの条件―ネオリベラリズム批判に応える

ローカル・ガバナンス(自己組織型ネットワークによる地域自治)の可能性について議論すると、「それはネオリベラリズムに回収されるだけではないか」と指摘されることがある。理念による批判はいくらでも可能である。その批判を踏まえた上で、英国のニュー・…

なぜリスクは過小/過大に評価され、専門知が貶められるのか―メアリ・ダグラスのリスク文化論

前回の記事では、リスクをめぐる制度的専門知の問題点を指摘するなかで、制度的判断に再帰性を担保するためには、ローカル・ノレッジ(民衆知)を組み込み普遍/特殊の二分法を乗り越えることが重要であることを論じた。 ただし、明らかに非科学的なバイアス…

ローカル・ノレッジはなぜ重要なのか―原発事故とリスク社会論の盲点

原発事故以後、ローカル・ノレッジ(民衆の知、市民の知)に対する日本社会のネガティブな評価が逆に高まっているのではないか。「(ときに「放射脳」とも形容される)素人は余計な口を挟まず、専門家集団が自律性を高めればよい」、「たいして専門的経験のな…

「自主防災組織結成による町内会活動の変容とその課題―東日本大震災直前の盛岡市内町内会を対象にして」『東北都市学会年報』掲載

伊藤嘉高, 2013, 「自主防災組織結成による町内会活動の変容とその課題―東日本大震災直前の盛岡市内町内会を対象にして」『東北都市学会年報』13: 1-15. 目次1 要旨2 冒頭抜粋 要旨 本稿では、東日本大震災直前の時期における盛岡市…

「日常性のなかの防犯コミュニティ」『安全・安心コミュニティの存立基盤』所収

伊藤嘉高, 2013,「日常性のなかの防犯コミュニティ」『安全・安心コミュニティの存立基盤』御茶の水書房, 21-56頁. 安全・安心コミュニティは現代を読み解くマジックワードになり得るか? 本書は、フィールドの現場からその光と影に迫るモノ…

一工夫したポストイット(付箋)とノック式蛍光マーカーで読む読書術

本を読んでもすぐにその内容を忘れてしまう。本棚に並ぶ本を見て、その内容を思い出すことができるのは、最近読んだ自分の専門分野のものぐらいである。記憶力が欠けている。どうしたらよいか。試行錯誤の末、辿り着いた私なりの読書術を紹介したい。 目次1…

緩和ケアの「社会化」を目指して(医学科3年研究室研修報告書)

山形県立中央病院・緩和ケア病棟の中庭 山形大学医学部医学科では、3年次の夏に「研究室研修」が設けられており、各学生が希望する講座で1か月間、研修することになっている。本講座では、純粋医療・医学については関知していないため、他の講座とは異なり…

ただ生きてあることの等しさ―川口有美子『逝かない身体―ALS的日常を生きる』

自分の存在の「価値」に悩むことがある。「社会的価値」や「経済的価値」などといった一面的な価値が人間の価値そのものであるかのような錯誤が世界を覆っている。そのなかで自分の価値は相対化され、ものさしで測られるものとなり、気がつけばいたずらな富や…