町内会長の「報酬」問題(2)

(この記事は「町内会長の「報酬」問題(1)」の続きです)

世間的にはいろいろと忙しい、この週末にも調査に応じてくださる。考えてみれば調査といっても、される側にとっては無益な商品しかないうるさい営業と同じである。

調査中に、こんなことをつい考えて無粋な質問をしてしまう。すると「まだ若いのだから。君も一人前になったら自分よりも若い人に同じようにしてあげればいい」とおっしゃる。有難い。

この善意の紐帯を切ってしまっては、明日の日本は無いと思う。できる限り人には優しく生きていこう。……などと書いているからといって、私は現在の町内会のありように全面的に賛成しているわけではない。私が問題にしたいのは、一部の町内会長の不正よりは、町内会をとりまく制度的な問題であり、大多数の町内会長は、その制度的な「あいまいさ」に由縁する負担を一手に引き受けているのである。

さて、町内会長の「報酬」問題であるが、中・大規模の町内会では、何からの形で手当が出ていることを昨日紹介した。しかし大多数の町内会長はそうした手当以上の出費をしているし、しかも当の会長ご自身もそのことに気づいていないのである。

泉区のとある昭和期住宅団地の定年退職された会長さんにこうしたお金の問題について聞いたことがある(この会長さんもまた好人物であるが、それは別の時に取り上げたい)。

私「会長は地域の活動のために自腹を切ったりされることがありますか」

会長「いや、そういうことはないですね。自分の金を使うのは、いろいろな会合や行事に出向くのにかかる燃費ぐらい……」

すると、横から奥さんが、

奥さん「この人はそういうかもしれませんけどね、そんなもんじゃあ、ありませんよ。毎日電話はあちこちにする、資料のコピー代もかさむでしょう、さらに付合いで飲みに出かける。本人は飲んでいい気分かもしれませんけど」

会長は渋い顔をしている――

この町内会では会長手当として年額4万円前後出ているとのことであるが、到底その額では済まないという。さらに、町内会長の職務をよく知らない町民からは、目に見える活動をしないと「お金をもらっているのに何もやっていない」と思われてしまうので、パトロール活動などを自主的にやっているという。

また、懇意にしていただいている、農住混合地域の1,000世帯を越える町内会長の場合、旧住民で長らく会長職にある方であるが、昨年まで手当はわずか年額1万円で、「今年から2万円にしてもらったが、何の足しにもならない」という。

ここでは二つの例をみただけだが、このように郊外の中・長規模の町内会では、報酬を出しているといっても、フォーマルな費用弁償にもなっていないことが大半なのである。したがって、町内会長の負担の実情をその地域の人びとにきちんと認識してもらうことがまずは必要である。とはいえ、そうした振る舞いはわれわれの美徳に反することであるから、なかなかそうもいかない。「町内会の活動はお金で済まされるものではない」(前出の町内会長)。

またその実情を知るのは、家計を把握し、会長のインフォーマルな負担を日々目にする、会長の奥さんである。が、そうした人たちが公に発言する機会もない。

では、この問題をどのように考えたらいいのか。ポイントは、フォーマル/インフォーマルをめぐる日本社会の構造転換にある。これについてはまた別の機会に取り上げてみたい。

今回の関連書籍

コミュニティ再生のための 地域自治のしくみと実践
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「町内会長の「報酬」問題(2)」への3件のフィードバック

  1. 初めまして。私は長崎純心大学心理学科の4年生です。
    今回、卒業論文のテーマで「ブログ」について調査をおこなっております。
    つきましては、調査協力をお願いしたくメールさせて頂きました。

    ご協力いただける方は、下記のアドレスにアクセスご、指示に従って進んでいって下さい。
    なお質問で得た情報はこの論文のためだけに使用します。
    質問の答えは統計的に処理し、答えから個人が特定されるような事は決してありません。
    ご不明な点がございましたら、お手数ですがこのアドレスにメール送信をお願いします。

    ご協力のほど、宜しくお願い致します。

    調査ページアドレス→ http://www.geocities.jp/g_hkok/Sp.htm
    お問い合わせアドレス→ june_6_1@msn.com

    青木

  2. 私の住んでる加須市は、町内会長が、選挙運動の旗振りをします。市長選が、町内会長の活動の見せ場任なります。一部の会長は、眉をひそめていますが、赤信号みんなが・・・という活動です。それで、会長手当ては、500世帯で、年間40万を超えます。源は税金ですが、選挙運動の手当てになっているとしか考えられません。現職の市長は、税金で選挙運動費用をまかなっているといえましょう。誰が考えたのか、見事なシステムです。

  3. 町内会長手当てが税金から出ているって?本当でしょうか、信じられません。
    町会費が税金で賄うべきを上納金として支払われています。これまでの訴訟では、町会側の敗訴。
    税金に替わって町会費から掠め取るやり方に、苦情が増えつつあります。そんな中町会長手当てを税金で払うって凄い、加須市は何の名目で支払っているのですか?

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