しばらく、澳門に調査で出ていた。中国返還後、澳門の地域社会は驚くべき速さで変容を遂げている。ただ、帰国後の現在、2005年仙台市町内会・自治会調査の報告書作成の肝所にあり、澳門については、また後日記したい。
『河北新報』1月25日夕刊の「再考・町内会」の第4回で、太白区の太白第二町内会での退会騒動のその後が報じられた。記事によると、騒動の発端は、総会での年間収支報告に対して不明瞭な部分がみられ、それを一部住民が問いただしたことにある。それに対して、執行部側は、十分な回答をすることが出来ず、それに業を煮やした一部住民が町内会を退会することになった。ところが、その1か月後、退会者によるゴミ集積所の利用を禁止することを町内会役員が決定。両者間の亀裂は決定的なものとなり、裁判沙汰にまでなる……
私がここで指摘できるのは、町内会会計の不明瞭さについてである。まずは、調査結果から、町内会の収入をみてみると、全体の7割が会費、残りの大半が(公報配布手数料も含め)会員数に応じた行政からの補助金であり、支出の4割が、会員数に応じて割り当てられる補助・負担金である。「会員数」が収支において大きな意味を持っていることにまずは注意したい。
さて、調査の最中に、とある町内会長から電話を頂き、調査票の会計に関する欄について指摘があった。すなわち、「本当の金額を書く人間など誰もいないよ。うちも総会資料のものを写しておくからね」と。
この言によれば、会員に公開し、行政にも提出する総会資料には「本当の金額」が書かれていないということになる。どういうことか?
町内会の収支に不透明な部分がある、と聞くと、「どうせ役員の飲食費に消えているんだろう」と思う人も少なくないだろう。しかし、件の町内会長によると、「とんでもない。町内会の運営は常に資金不足だ。そこで操作が必要になる」。
どういう操作か? ここでは具体的には書かないが、分かりやすく言えばこういうことだ。つまり、会員数に応じて行政から補助金がもらえる際には、会員数を水増して報告する。逆に会員数に応じて負担金が割り当てられる際には会員数を少なくする。「行政もそのことはわかってはいるが見ないふりをしている。持ちつ持たれつだからね」。
また私が実際に調査に出向く中でも、ある町内会の会員数をその隣の町内会長に述べたところ、「あれ? そんなに少なくないですよ……まあ、お金の問題とかいろいろありますからね」と、実情を話してくださったことがある。
とはいえ、具体的には報告書で書いているが、実際にすべての町会が慢性的な資金不足に困り操作をしているわけではないし、私がお世話になっている町会の多くは会計の独立性を確保している。
ともかくも、ここで指摘したいのは、役員層が私的流用をしているのか否かにかかわらず、これまで指摘してきたようなインフォーマルな要素は会計の面でも厳然として強くみられ、それを役員層が引き受けているということだ。