【写真】嘉山教授(上)、村上教授(下)(m3.comより)
昨日、わたしたちの行った「がん患者の就労状況・社会復帰に関する調査」(山形大学蔵王協議会、山形大学医学部がんセンターと共催、研究代表者・嘉山孝正先生)の結果概要について記者会見が行われました。
ウェブで閲覧可能な各種メディアの報道をここにまとめます。
- 時事通信「がん患者、4分の1が失職=自営に比べ、被雇用者高率―山形大調査」(Yahoo! Japan News)
- 山形新聞「『体調が不安』…がん患者の25%離職 山形大蔵王協議会など調査」
- 河北新報「がん患者4人に1人失職、山形大医学部調査 環境整備が必要」
- 読売新聞「がん患者離職25%、定年以外の理由で…山形」
- 朝日新聞「がん患者の25% 定年以外で失職」
- 毎日新聞「がん患者:職場理解得にくく 給与所得者、定年以外で4分の1離職 山形大など調査 /山形」
- 産経新聞「がん患者 4人に1人、失職 無言の圧力…医療側の説明必要」
- m3.com「がん患者の就労支援にも早期発見がカギ~山形大が全国初の本格的調査、『医師の関与必要』」(橋本編集長の記事、閲覧には会員登録が必要です)
今年から始まる第2次がん対策推進基本計画でも就労支援対策が取り上げられるなか、本調査は、山形県内のがん診療連携拠点病院の協力を得て、がん患者・体験者の就労状況と社会復帰の実態を把握するために実施したものです(調査有効回答数1,163、有効回収率55.8%)。
具体的には、がん患者・体験者の職業やがんの病期・部位の違いを踏まえ、従来、必ずしも明らかにされてこなかった、がん患者・体験者の職業やがんの病期の違いによって生じている就労状況・社会復帰の多様性を浮き上がらせました。詳細な調査結果は、近く論文として発表されます。
以下、m3.comからの引用です。
嘉山氏はその〔=就労支援・社会復帰対策〕重要性を強調、「本人は社会活動ができる状態であっても、がんという偏見で仕事を辞めざるを得ないのは合理的ではない。今後は、患者が会社に仕事を継続できる状態であることや病状の見通しなどを説明するなど、医師も関与してこの問題に取り組んでいかなければいけない」と述べた。今後は、国会議員や全国の大学、医師会のほか、経団連などにも調査結果を配布し、がん患者に対する就労支援や社会復帰に関する対策の重要性を訴えていくという。
医療政策学教授の村上正泰氏も、「職業に応じて、罹患後の就業や社会復帰の状況には違いがある。きめ細かな対策を社会として考えていくことが必要。また診断時よりも収入が減少する人も多い上に、医療費の負担もかかる。金銭的な支援を望む声も数多く寄せられており、経済的な負担軽減に向けた対策も求められる」と考察した。
現在、がん対策推進計画の変更案を検討しています。就労支援問題を書き込むにあたりニーズや実態が掴めないと困っていました。この最新情報を拝見し本当に喜んでいます。多くの方々にご覧いただき、皆さんの研究成果を生かして頂きたい思いです。
ありがとうございます!
本調査の詳細な分析、提言は、今後、嘉山教授を代表とする研究チームで論文発表していくことになっております。
時機がくれば、このブログ等でもご紹介できると思います。
今後もわたくしたちの取り組みに目を向けて頂ければ幸いです。
山形県内に住む癌患者です。
今は定期的に検査を受けていて、再発はしてません。
上記の記事、読まさせていただきました。
全くその通りだと思います。
一番必要なのは、行動です。
調べて論文まとめるだけでなく、実践してほしいと思います。
大変だとか、支援が必要なのは誰もがわかること。
今は支援という名の声援だけで終わっています。
名ばかり支援では、どうにもなりません。
行動のともなる支援、斡旋が必要です。
つまらない意見ですが、書かせていただきました。
一番必要なのは、行動とのご指摘、その通りだと考えます。目下、就労支援体制の構築はほとんどの職業紹介施設、がん診療連携拠点病院で進んでいないという調査結果もあります(野村和宏・門山茂・石川睦弓・山口健, 2011,「がん患者治療中・治療後の職場復帰支援に関する社会資源の調査」『日本職業・災害医学会会誌』59 (5): 255-62)。
平成24~28年の「がん対策推進基本計画」では、「就労に関する問題への対応」、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が新たに加わり、「就労に関するニーズや課題を明らかにした上で、職場における理解の促進、相談支援体制の充実を通じ
て、がんになっても安心して働き暮らせる社会の構築を目指す」とされました。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html
私自身は調査研究を生業としており、分をわきまえなければなりませんが、今後、実際にどのような取り組みがなされ、あるいは、なされていないのか、そして、どのような課題が生まれているのか、「調査のための調査」に終わらないよう、取り組みたいと考えています。
ご指摘ありがとうございました。
この件に関して論文発表をしています。
随分時間が経ってしまいましたが、ここでも紹介したいと思います。
Ito H., Hozawa A., Yamashita H., Kubota I., Nemoto K., Yoshioka T., Kayama T. & Murakami M. Employment status among non-retired cancer survivors in Japan, European Journal of Cancer Care, 24 (5): 718-23, doi: 10.1111/ecc.12304.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25752868
村上正泰・伊藤嘉高「がん患者のステージ・雇用形態別にみる就業の現状と課題―山形県内がん診療連携拠点病院における患者調査を通して」『保健医療社会学論集』26(1): 37-47.
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020574369