規制緩和の進展とともに労働市場がフレキシブル化するなかで、看護職のセカンドキャリアの現状と課題について、求人、求職の間に存在するギャップを分析し、セカンドキャリア活用の可能性と課題を検討した。
- 吉原直樹, 田中幸子, 伊藤嘉高, 木田あや子, 佐々木光子, 田中ゆかり, 2006, 「少子高齢社会における持続可能な看護人財戦略―生涯現役社会をめざして」『看護管理』16 (9): 758-63.
- 吉原直樹, 田中幸子, 伊藤嘉高, 木田あや子, 佐々木光子, 田中ゆかり, 2006, 「需要と供給のギャップの底にみえるもの」『看護管理』16 (8): 668-72.
- 伊藤嘉高, 吉原直樹, 田中幸子, 木田あや子, 佐々木光子, 田中ゆかり, 2006, 「セカンドキャリア看護職者に求められていることとは?」『看護管理』16 (7): 578-82.
- 伊藤嘉高, 木田あや子、佐々木光子、田中ゆかり、吉原直樹、田中幸子, 2006, 「求職側調査にみるセカンドキャリア看護職の現実」『看護管理』16 (6): 488-91, 医学書院.
- 田中幸子, 吉原直樹, 伊藤嘉高, 木田あや子, 佐々木光子, 田中ゆかり, 2006, 「セカンドキャリアの雇用の実態―少子高齢社会における看護職者の働き方とは」『看護管理』16 (5): 398-402.
- 吉原直樹, 田中幸子、伊藤嘉高,, 木田あや子, 佐々木光子, 田中ゆかり, 2006,「いまなぜセカンドキャリア看護職の就労支援なのか」『看護管理』16 (4): 314-8.
「求職側調査にみるセカンドキャリア看護職の現実」冒頭抜粋
少子高齢化に伴う労働力減少と、高齢者の自己実現なる社会的理念とが結びついたときに、概念としての「セカンドキャリア」が実体性を帯び始める。そして、定年までに蓄積された経験、知識、技能を活用できる機会の創出が社会的な課題とされる。
こうした枠組みに基づいた認識は、看護職にもそのまま横滑りしている。すなわち、高齢の「ベテラン・ナース」が、自身のライフ・キャリア構築の中で自身の豊富なワーク・キャリアを社会に還元していく流れを創り出すことで労働力減少もカバーできるという調和的図式である。
しかし、今回みるように、セカンドキャリアと想定される60歳以上の看護求職者の実態はこうした調和的図式に必ずしも収まるものではない。さらに、そうした人びとの自己認識は、セカンドキャリアを控えた50歳以上の看護職従事者の抱く将来像、さらには前線で働く現役の看護職員がセカンドキャリアに対して抱くイメージとは大きな乖離がある。そして、ここから浮かび上がってくる現実は、次回以降でのライフ・キャリアとしてのセカンドキャリアを考える際の一つの材料ともなるだろう。
以下では、神奈川県ナースセンターに求職登録している40歳以上の602名を対象にして2004年12月に行なわれた「セカンドキャリア人材活用のための看護職員の実態調査」のデータ(有効回答数217票、有効回収率36.0%)に即して(年齢層の内訳は、40歳代115票、50歳代71票、60歳以上30票であり、不明の1票は除外した)、こうしたセカンドキャリアをめぐる虚実を浮かび上がらせていきたい。……
「セカンドキャリア看護職者に求められていることとは?」冒頭抜粋
第4回以降では、これまでの調査結果を敷衍するかたちで、看護界の特殊性という視点から、看護職におけるセカンドキャリア概念のもつ含意について検討する。
第4回では、前回までと同様、神奈川県ナースセンターが行なった調査の結果に基づき、セカンドキャリア看護職に対する受給間のギャップの存在を確認し、看護職に対してセカンドキャリアという言葉を一律に適用することの孕む問題を明らかにする。すなわち、(現場で働いている人間も含め)われわれが観念的にセカンドキャリアの有用性について考える場合と、管理者側がセカンドキャリアに対して実際的に期待する役割との間にズレはないか、という点を問うてみるわけである。
まず、雇用側のみるセカンドキャリアのイメージを年齢的に見ると「60歳前後以上」(64.9%)、「50歳以上」(23.5%)とする認識が全体の90%を占めており、全体社会の動向に合致したものとなっている。ただし、施設側が、そういった年齢層の「ベテランナースの技能」を十二分に認めそれを現場で活かそうと考えているかといえば、そうでもない。たとえば、……