村上正泰, 伊藤嘉高, 2015, 「がん患者のステージ・雇用形態別にみる就業の現状と課題―山形県内がん診療連携拠点病院における患者調査を通して」『保健医療社会学論集』26(1): 37-47.
要旨
がん患者の就業に対する支援の重要性が指摘されるなか、本稿では、山形県内の全がん診療連携拠点病院で受療中のがん患者を対象とした質問紙調査から、がんのステージや雇用形態の違いに焦点を当て、その就業状況の実態を明らかにした。ほとんどの患者は仕事を継続する意思を持っていながら、全体の約1/4が定年以外の理由でがん診断後に失職しており、とりわけ男性の場合には、非正規雇用労働者の失職率が有意に高かった。さらに、仕事を継続しているケースでも過半数が治療継続中であり、その半数近くが仕事に対してさまざまな不安を感じていた。また、高額の医療費負担とともに、有業者でも年収200万円を割り込む割合が高まる実態も明らかとなった。経済的支援はもちろんのこと、十分な休職期間の保障や非正規雇用労働者に対する支援とともに、正規雇用であってもフルタイム労働に限定しない柔軟な働き方を認め支えるような制度設計が必要とされている。