学生による情報発信「新潟大学人文学部学生プロジェクト」にご声援を!

(本記事は新潟大学人文学部『学部だより』29号に掲載したものの再掲です。)

コロナ禍は学生から対面的コミュニケーションを奪いました。学生生活に必要な情報を他の学生から得る機会が失われ、その結果、自分から積極的に動かなければ情報が得られにくくなりました。それは、学生の自立を促した一方で、学生の不適応をも生みだしました。

もちろん、この情報格差はコロナ禍以前から見られたものです。いわゆるコミュニケーション能力に長けた学生ほど、自分に必要な情報を必要な時に手にできていたわけです。しかし、それもまた限られた関係のなかで得られる限られた情報に過ぎません。そして、限られた情報のなかで授業の履修や専攻分野、将来の進路を決定していました。

自己決定を行ったという感覚は、その後の生活への適応や精神的健康に影響していると言われます。しかし、どんな自己決定でもよいわけではありません。逆説的にも、自己決定は、多くの情報と支援に支えられれば支えられるほどその強度を増していきます。さまざまな情報に接することで、ひとつの正解、ひとつの論理に支配されない強固な「自己」が形成されていくからです。

自分を取り巻く限られた環境を超えようとする気構えは、大学での学問的実践を通して身に着けるべき姿勢のひとつです。とすれば、自分にそうした気構えをもたらしてくれる学問に関する身近な情報を増やすことが何よりも重要です。そこで、人文学部学生プロジェクト(以下、人プロ)代表の熊谷弘毅さん(哲学専攻4年)をはじめとするメンバーが、人プロをそうした情報を共有する場にするべく立ち上がりました。

人プロは、これまでも新任教員のインタビュー記事作成、留学生歓迎会の実施、オープンキャンパスへの参加などを行ってきましたが、2022年度からは新たにブログを立ち上げ、人文学部の多種多彩な授業やゼミの魅力や、学部生や大学院生の生活の様子など、学生の自己決定に資する情報をさまざまに発信しています(ブログは人文学部の公式サイトからリンクされています)。私は熊谷さんの提案を受け、ブログのシステム構築をお手伝いしました。

こうした人プロの取り組みは、その当初の目的であった広報活動(人文学部のブランディング)にとっても有意義です。人プロは、あくまで在学生同士で情報をやりとりする場になっているので、受験生からすれば「実際の大学生活をのぞき見れる」ものであり、単なる宣伝記事よりは遥かにリアリティを感じられ、良質な自己決定に資する内容になっています。「実態とかけ離れたキラキラ感のある宣伝」が跋扈する世の中にあって、大学が示すべき広報のありかたのひとつになっていると考えます。

Instagram(@shindai_jinpro)も立ち上がっています。ぜひフォローいただき、人文学部生たちの取り組みに温かいご声援をお願いします。

追記

人プロブログには、私のインタビュー記事「世の中のあらゆるものが社会学の対象になる」も掲載されています!

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