前職の新潟医療福祉大学では、別記事でも書いたように国内外の医療系大学の多職種の学生が参加する連携総合ゼミを運営するとともに、在籍最終年度は全体の実行部会長も務めました。
その成果と課題について、参加学生へのアンケートに基づき考察したのが本稿です。あわせて、多職種連携教育の効果を測定する指標であるRIPLSの批判的検討も行い、「専門外の問題点に気づき、解決策を探る力に対する協同学習の効果」を測定する必要があることを指摘しました。
ゼミを一緒に運営した伊藤さゆりさんほかとの共著です。
文献情報
- 伊藤さゆり, 伊藤嘉高, 松井由美子, 村田憲章, 藤井豊, 2024,「対面/オンラインによる連携総合ゼミの学習効果測定とその課題」『新潟医療福祉学会誌』24(2): 1-8.(本文リンク)

要旨
COVID-19の流行に直面し、新潟医療福祉大学ではIPE を対面開催からオンライン開催へと切り替えた。そこで今回、Readiness for interprofessional learning(RIPLS)日本語版の19項目の質問紙を用いて、開講方式の変更による学習効果への影響を検証した。
質問紙の結果を分析した結果、授業前・授業後の学生の認識に有意な変化がみられた質問項目の数は、対面授業時とオンライン授業時の間で比較したところ,有意水準5%で有意な差を認めなかった。一方で授業前・授業後の間に有意差を認めなかった質問項目からは、自己の専攻内での実践的問題解決能力の学習を重視する傾向や、コ・メディカルを医師のサポート役と位置づけ専門職の独立性に否定的な傾向が認められた。
因子分析の結果では、専門性を超えて協力し、各自の専門性から外れる問題に焦点を当てるといった因子は抽出されなかった。そこでオンライン時には、専門外の問題点や解決策発見に対する協同学習の効果を評価する2つ質問を新たに設けたところ、授業後に学生の認識の有意な上昇を認めた。
以上の結果から、RIPLS日本語版では学習効果の評価が不十分な可能性が示唆された。今後も対面・オンラインそれぞれの長所を考慮しながら、同じ質問を継続実施して評価尺度の改善を図る必要がある。