「石川・新潟・山形 3県における『手話の失語症』の実態調査」『言語聴覚研究』20(4)掲載

これまで適切な検査がなされてこなかった「手話の失語症」の検査法確立に向けて、実態把握のための基礎的な調査が行われました。私は、その調査の調査票の設計と分析で関わらせていただきました。

書誌情報

  • 伊藤さゆり、伊藤嘉高、武居渡、鈴木匡子(2023)「石川・新潟・山形 3県における『手話の失語症』の実態調査」『言語聴覚研究』20 (4): 311-9.

要旨

「手話の失語症」者への支援の実態とその課題を明らかにするため,石川,新潟,山形の言語聴覚士が在籍する施設に対し,「手話の失語症」への認識や実施可能な支援,経験した症例数についてアンケート調査を行い,症例を経験した施設には症例の詳細についてインタビュー調査を行った.その結果,「手話の失語症」の存在については半数の施設で,症状となると7割以上の施設で,十分な知識を持つ言語聴覚士がいないことが明らかになった.実施可能な支援の内容では,聴者向けの失語症検査やリハビリテーションを利用するとした回答が最も多く報告された.症例数は過去5年間に1県あたり1,2症例が存在していた.聾者の日本語の読み書き能力の傾向や,手話言語と音声言語の差異を考慮すると,「手話の失語症」者に特化した検査法などの支援が望ましいと考える.今後は調査範囲を全国に広げてより詳細な実態調査を行っていく.

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