町内会は精一杯!―町内会の課題

山形市調査では、3月の繁忙期にもかかわらず、多くの町内会の皆様方からご回答を頂き、ありがとうございました。

私事になりますが、4月に入りいくらか立場的に身軽になったので、山形の調査を進める前に、これまでの調査経験を踏まえ、仙台市町内会に対する私なりの率直な考えを記していきたいと思います。

ここ最近、町内会の重要性を理解し、町内会を何とかしようとする「外の」人たちの間では、無関心層が高まるなかで町内会に新しい存在意義(可能性)を何とか見いだそうとする動きが高まっています――福祉、防犯、防災、教育、そして自治。

しかし、実際に私たちが仙台市で実施させていただいた町内会調査では、町内会の活動が10年前の調査時に比べて非常に活発になっていることが明らかになりました(ただし親睦行事は除く;詳しくは東北都市社会学研究会のサイトにある報告書をご参照ください)。しかし、やはり無関心層は増え続ける一方なのです(無関心層の増大、役員のなり手不足……)。

つまり、「外から」いくら町内会の役割を与えても、会長や一部の役員に負担が重なるばかりで、さらに、そうした負担の重さをみた一般の人たちはますます活動から遠のいてしまう(「そんなのは行政がやる仕事でしょ」と批判する)。つまり、町内会が活発化するほど、無関心層が増える。悪循環なのです。

したがって、行政機関も含め、現場から離れたところで町内会の活性化を考えるならば、それは、仕事やテーマを「与えて」、その存在意義を高めることなどでは決してないはずです。

そうではなく、むしろ役員層の負担を軽くすることにこそ、真の活性化の鍵があります。とりわけ、各種団体の会議にも振り回される状況(今回の調査ではっきり数値で出ました)を全市的に考え直し、組織改革をはかることが求められます(このリーダーシップを発揮できるのは梅原仙台市長しかいません)。

そして、役員層が地域に目を向ける時間と余裕を確保し、各々の地域の人びとが交わり合い、そして町内会が親睦活動も含め自律的に活動できる環境を整えることです。

さらに、地域活動の活性化のためには、組織ベースではなく活動ベースの補助金体制を確立することが求められます(ただし、町内会に対する育成奨励金の「全額」を、この活動ベースの補助金へと回すことがあってはなりません)。その際には、活動主体として、地縁型の町内会とネットワーク型の組織とが連携しあえるような補助金申請の枠組みも用意しておくことが重要です。そうすることで、町内会とNPOとの相互理解の促進にもつながるはずですし(地域を良くしたいと思う心は同じなのです!)、ごくごく一部でみられる非民主的な町内会の運営や、ごくごく一部にみられる非加入者の身勝手な生活も立ちゆかなくなるでしょう。

こうして町内会もまた「開いて守る」ことで、わたしたちひとりひとりの住民、市民が、町内会を「古くさい」ものとか「翼賛体制」と見なすステレオタイプに縛られることなく、一つ一つの町内会とその歴史に対する率直な理解を進めることができるはずです。

したがって、外からやるべきことは、すでにあるいくつもの小さな流れを、その源流を大切にしながらも、自由に交わりあえるような「水路付け」をすることだけであって、「課題」や「テーマ」を与えることではない。町内会は常に精一杯なのです。

以上、若輩者ながら、日々の調査を踏まえ、現場レベルから、「町内会の課題」について簡単にまとめました。

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