新潟医療福祉大学着任に当たっての抱負~「優れたQOLサポーター」としての医療経営管理専門職の育成に貢献する

2018年9月より、山形大学医学部を退職し、新潟医療福祉大学の医療経営管理学部医療情報管理学科にて勤務することになりました。妻が別学科の教員として着任しており、家庭の事情により私も後追いしました。

着任にあたって記載した「抱負」を共有します。私が考える診療情報管理士、医療事務の学部教育の課題を示しています。


私は、2008年11月に山形大学医学部(医療政策学講座)に赴任して以来、それまで専攻してきた社会調査と統計学のスキルを活かして、医療、看護、介護、福祉にまたがる調査研究と教育に打ち込んできました。この分野横断的な研究・教育歴は、貴学の掲げる「チーム医療」と「チームアプローチ」に基づく「優れたQOLサポーターの育成」に携わるうえで、確固たる土台になるものと考えます。

たとえば、科学研究費補助金「自治体病院再編が地域生活に及ぼす影響に関する社会学的研究」(2009 ~2010年度)医療経済研究機構第18回研究助成「青森県西北五地域における広域ネットワーク型自治体病院再編による住民受療行動の変容」(2014~2015年度)山形県寄附講座事業「DPCデータに基づく山形県内急性期入院医療の現状調査」(2013年度~現在)などでは、大学病院と県内関連病院の医事課職員との連携により、SQLなどによる診療データ分析を、社会統計学や社会調査と組み合わせることで、今日の「地域医療構想」の先駆けとなる研究をさまざまに進めてきました。

これらの調査研究を通して目にしてきたのは、多くの医療事務職員の方々が、診療報酬請求業務だけでなく、幅広い医療経営の分析能力―データ処理能力と統計処理の能力はもちろんのこと、(下記のように私がさまざまなフィールドで行ってきたような)さまざまな立場に立ち、数値のみに囚われない調査マインド―を発揮することが求められながらも、それに応えられるだけのスキルを十分に持ち合わせていない現実でした。

この現状を踏まえると、貴学医療経営管理学部は、「優れたQOLサポーターの育成」という明確な理念のもとでの他5学部との連携による教育・研究体制を確立していることから、まさに次代を担う複眼的な医療経営の研究・教育拠点として、全国をリードする存在になるものと理解しております。そのなかで、私もまた、「数値のみに囚われない調査マインド」を持ち合わせた「データ処理能力と統計処理能力」を有する医療経営人材の育成という点で、大きな貢献ができるのではないかと自負しております。

上記以外に行ってきた研究をいくつか挙げますと、まず、科学研究費補助金「病院・介護施設からの在宅復帰の阻害要因に関する社会学的研究」(2011~2014年度)では、山形県内病院(ほぼ全病院)の退院支援部署の看護師、ソーシャルワーカーに対するヒアリング調査、統計調査とともに、患者に対する量的調査を実施し、「患者自身に対するエンパワメント」の重要性と、そのために求められる多職種連携の条件を明らかにしました。こうした取り組みは、貴校の理念に合致するものであり、とりわけ「連携総合ゼミ」は、微力ながら私の能力と経験をいかんなく発揮できる場のひとつであると考えます。

そして、現在行っている科学研究費補助金「地域居住の時代においてサービス付き高齢者住宅入居がもたらす社会的諸関係の変容」(20152018年度)では、時として「介護」に焦点が当たりがちな高齢者の生活が、実際には、自立・要支援・要介護の区分にかかわりなく、仕事にせよ、趣味にせよ、交流にせよ、移動にせよ、さまざまな生活を「自律的」に営んでいることを明らかにするとともに、サービス付き高齢者住宅における自律的生活の維持に必要な条件を検討しています。赴任後も、NSGグループのサービス付き高齢者住宅などでフィールドワークを実施させていただければと考えております。

私の教育能力に関しては、業績書にありますように、本務校の公衆衛生学実習(医学科4年)で担当した班が3年連続で最優秀賞を獲得してきました。他大学や専門学校での講義では、基礎学力や学習意欲がさまざまな学生を相手にしながら、試行錯誤の連続ではありますが、授業評価で高い評価を得てきました。

とはいえ、各分野をリードする貴学の先生方から見れば、私の能力と経験はごく限られたものでしかありません。私の足りない部分については他の先生方の御指導を仰ぎつつ、絶えざる自己研鑽により、研究面においても教育面においても、自己の強みを生かし、貴学の理念に沿った成果を着実に出して参りたいと決意しております。

この記事のタグ