「制度的〈地域〉表象の限界―仙台市柳生地区の場合」『地域社会学会年報第18集』掲載

伊藤嘉高, 2006, 「制度的〈地域〉表象の限界―仙台市柳生地区の場合」『地域社会学会年報』18: pp.121-42.

要旨

地域表象の前期近代的同一性(すなわち均質性)が今日大きく揺らいでいることを明らかにするべく、地域の表象をめぐって織りなされる町内会やボランタリー・アソシエーションの活動について検討し、町内会という制度的表象に収まらない、非制度的な表象が湧出するなかで、町内会が従来のように〈地域〉を客体的ないし制度的に表象する(つまり行政国家的な文脈を背景に地域を一つに統合する)ことが困難になっていることを明らかにした。そして今日の町内会の課題として、地理学的には同じ地域に住んでいても、地域の表象による共同性が複数化・差異化するなかで、複数形の共同の地平を(統合や縫合ではなく)緩やかに離接する共通の場(交接点)となることが求められていることを実証的に析出した。

当初は「地域」そのものを問うつもりであったが、うまくいかず、「地域」を「領域的に」捉える思考が限界にあることを実証する内容となった。しかし、博論では「地域」の存立構造を論じており、本論もその枠組みの中に位置づけ直された。

この記事のタグ