媒介の思考としての観光学~遠藤英樹ほか編『ワードマップ 現代観光学―ツーリズムから「いま」がみえる』

遠藤英樹、橋本和也、神田孝治編『ワードマップ 現代観光学―ツーリズムから「いま」がみえる』新曜社、2018年。

概要

今や現代を特徴づけるものとなった観光。それを学ぶ愉しさ=悦びを味わえるように工夫されたワードマップ。「まなざし」「感情労働」「スポーツ観光」「ダークツーリズム」「ガイドとナビ」などの新鮮なキーワードと「現場からの声」でガイドする。

短感

本書では、モビリティ研究はもちろん、アクターネットワーク理論も全編を通して登場しています。なぜならば、現代観光学は「たえざる移動(モビリティ)によるグローバルな世界が有する多元性を引き受け、不透明な社会のなかで多様に対立するもの同士を媒介し、結び、連接し……無条件に自由な思考が可能な場を創出する」(p.274-5)からです。

この指摘の後、編者の遠藤は、次のようにまとめています。

移動を民主的なものへと転換し、そのことに基礎づけられた「媒介の思考」により、不透明な社会のなかで、ねばり強く「媒介する世界市民」であろうとすること―そうしたことを思考する人びとへ、本書が大切なメッセージを届けることができていたら幸いである。

(p.275)

観光社会学にとって、モビリティ研究とアクターネットワーク理論が不可欠な要素であることを、逆にいえば、アクターネットワーク理論を研究する者は、観光社会学の実践から大きな学びが得られることを、本書は教えてくれます。

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